悲劇にはまだ早い

発達障害な私の備忘録。

人の顔の覚え方

突然だが、世の中の人々はどのように個人を識別しているだろうか。

「えーとあの人、顔は出てくるのに名前が思い出せない」なんて言葉はよく聞く。

しかしよく考えてみると、それは人がどのようにして他人を覚えているか、というプロセスを追体験する重要な手がかりなのでは? と思う。

 

私にはあまり、顔は浮かぶが名前が出てこない、ということがない。

大人になり仕事を始めてから気付いたことだが、私は「顔だけ覚える」のが苦手らしい。

お客さんに呼び止められて対応し、いったんその場を離れる。するとさっきまで話していたのが、どの人だかわからなくなることが時々あった。

思えば学生時代は約200人いた同級生(もちろん話したことのない人が大半)を全員フルネームで暗記していたが、それはクラス分けの紙や座席表があってのことだった。

そして職が変わり、名刺を貰うことが増えると、人をすぐ覚えられるようになった。

ようは文字のイメージで人を覚えていたのだ。

 

人を覚えるときに私はまず、漢字のイメージを見る。日本人の姓には、ほぼ必ずといっていいほど自然に関する字が入っている。そして自然は色と結びついている。

名前とイメージの結びつきを、個人的なメモも兼ねてこの記事に残しておこうと思う。

 

 

たとえば山本さんなら、黄色のイメージ。たぶん、山吹色から来ていると思う。山はどっしりとした印象があるし、本という字も「基本」「本家」「大本」などのしっかりしたイメージがある。したがって、私の中ではなんとなく「黄色系で土台のある感じ」になる。そこに顔や姿を見たときの印象が結びついて、個人としての記憶になる。山がつく姓は縦書きにしたとき左右対称のものが多く、バランスがよく見えるというのもあるかもしれない(山本、山田、山口、山内、山中、たぶんその他も)。

土系の字でも、石とか岩がつく人はまた別で、灰色で冷静そうな感じがする。

 

植物に関する字が入っている名前は、緑のイメージ。森、林、草など大きなカテゴリを指すもの。あとは笹、竹、松とか、特定の種を指し示すものはよりそのイメージに近い。蕨とか葦とかちょっとレア植物だとより覚えやすい。部首が草冠や竹冠だともう緑。種、野がつく名字も緑っぽい気がする。

 

水系はぜんぶ青とか水色。水、川、池、崎、サンズイがつく字全般。払いの多い漢字が多いので、線が細く繊細なイメージがある。あとは2文字目に田がつく名字など。なので池崎さんとか川崎さんは私の中ではすごく青い。あと個人的な所感だが、川は薄いブルーで、河は濃い青のイメージがある。沼田さんとかはもうちょい緑に近いイメージがある。

 

また色そのものが入っている名字はとても覚えやすい。赤井、青木、白井、黒田、金など。「ミドリ」は下の名前で見ることの方が多い気がする。その場合も緑っぽいイメージになる。

 

縁起のいい字が含まれている名字は、ピンクだったり暖色系のイメージになる。福がついてると完全にピンク。あとは沖縄ルーツの人に多い喜、嬉、嘉などの字は、朱色に近い赤の雰囲気を感じる。愛も同じ。でも吉はなんか別。たぶん吉で始まる名字は多いので、自分の中では別カテゴリになっているのだろう。

 

あとは位置系。前、後、中、上、下、奥など。セットでつくのがだいたい田とか山なので、一枚の絵として想像しやすい。後がつく人はちょっとレアそう。

 

方角もまた別。東西南北がつく名字があてはまる。東は朝、西は夕暮れ、南は海、北はクールなイメージになる。あと同じ東さんでも「アズマ」なのか「ヒガシ」なのかでかなり印象は変わる。母音からしてまるきり違うので面白い。

 

また位置系とは別にサイズ系もある。大、小のつく名字。でも小山田さんとか大前崎さんとかはそれはそれで3文字カテゴリに入っちゃうので別だったりする。

 

それから動物系。兎や犬、熊、虎、馬など。猫はフィクションではよく見かけるが、現実にはあまりいない気がする(猫のつく方が読んでたらごめんなさい)。魚は水系に入る。蛇は緑(藪のイメージかもしれない)。

 

蛇で思い出したが、ちょっと怖い系もある。鬼蛇、裏などの入る名字。余談だが、一部の鬼のつく名字の家庭では、節分のときに「鬼は外」とは言わずに「福は内」だけ言うという話を聞いたことがある。

 

それから有名な地名と同じ系統。秋田さん、千葉さん、石川さん、岡山さんなど。

 

千葉さんで思い出したが、数字系の名字も別の分類っぽい。万、千、百、あとは一、二、三、四、五、など。なんとなく奇数のつく名字のほうがよく見かける気がする。

 

これだけつらつらと書いたけれど、自分の覚え方をメモするよりは、むしろ他の人の覚え方のほうが興味深いかもしれない。